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特別、迷ったりする事もなくカラオケについた。地元の人間がいれば当然の事だ。
バスからずっと真由美はオレの右側を占領していた。喋りっぱなしだ。
他方、目標の由美子は気がつけば左側にいる。
他の女の子と話ているが…、まぁ、いいだろう。
カラオケの部屋に入ると自然な流れで座った。しかし、オレは1つだけ……由美子の正面に座るようにした。
何も気にしなくても真由美は隣に座るように喋り続けた。
(よし、成功だ。さぁ、いくかね…。)
「ねぇ、注文どうする?」
女の子の誰かが言った。
「じゃあ、オレ、ビールで…。」
先陣をきれば頼みやすいだろう。
「へぇ、アキくんビールなんだ。ワタシは…。」
真由美が早い反応をしてくれた。
「ガキじゃないんだから…、やっぱ、ここはビールだろ。」
これでジュース類は注文しにくくなったはずだ。
「まぁね、ほら、入学初日だし…、一杯ぐらいイイだろ。」
更に注文しやすくもしてやった。
予想通り、ほとんどアルコールだ。由美子なんてビールにしていた。
カラオケが始まるとそれなりに盛り上がり楽しい時間になった。
カラオケというのは、歌を唄って盛り上がって…っという所ではあるが、冷静になれば、顔を近づけないと話のできないシチュエーションでもある。
ただでさえ、距離が近い感じの真由美にオレは更に近づいて話すようにした。
当然、時々は由美子にも目線を向ける。
由美子の顔がビールで赤くなった頃には、由美子と何度も目が合うようになった。
(よし、勝負。)
オレは由美子に目線を合わせてから誰にも気づかれないように出口へと目線を飛ばした。
「あっ、真由美、ゴメン。オレちょっとトイレ。」
よく喋る女を制してオレは席を立って部屋を出た。
(さぁ、どうなるかな?)
オレはとりあえず、トイレで手を洗う。只の時間つぶしだ。
(ありゃ?来ない…?ダメだったか?)
自分の見込み違いが恥ずかしくなりながら部屋へ向かってオレは歩き始めた。
「アキくん……。」
廊下の角を曲がった所に由美子は立っていた。
「おう、由美子。来てくれたんだね。」
「うん……、何……?」
「あぁ、ちょっと話したくてさ…。」
「真由美ちゃんと楽しそうやから良いやん。」
(……かかった。)
「オレは由美子が好きだから話がしたい。それじゃ、ダメか?」
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