田中由美子~file1~

7/17
前へ
/49ページ
次へ
妙な空気が流れた。 いや、妙だと思ってるのはオレだけか…。 由美子が驚いたまま、反応しないのだ。普通は…「うそ~」だの「ありがとう」だの反応があるのだが…。 「由美子?」 「あっ?えっ?ゴメン?なんで?」 「ははっ?なんで?好きに理由がいるのなら…説明しようか?」 (やれやれ…、聞かせてとか言うなよ。ってか、こう言えば聞かせて…なんていう奴はいない。) 「いや、まだ……、今日、会ったばかりで…。いきなり、言われても…。」 「信用できない?」 「いや、なんて言うか……。」 (そりゃそうだ…。だって嘘だもの。) 「由美子……。」 オレは由美子の手を取って引き寄せて、出来るだけ顔を近づけた。 「キャ!!えっ?アキくん?」 「由美子、オレの目をしっかり、よく見て……。」 オレは左腕で由美子の腰を抱き右手をの後頭部へ回した。 「由美子……、時間とか場所とかじゃない。好きなんだ、キミを…。」 由美子は何も言わずにオレを見ている。 「オレの目は嘘を言っているか?由美子…、キミが好きだ……。」 「…………なんで、ワタシなんて…。」 「最高に可愛いし…イイオンナだよ。」 「でも……ワタシ……。」 「オレの事キライ?」 「キライじゃないよ…。」 「じゃあ…好き?」 由美子は頷いた。 オレは徐々に顔を近づけていた。 「でも…、ワタシ、彼氏いるし…。わかんないよ。」 (なんとなく、わかっていたさ、そんな事…。) 「だから?関係ないよ。オレも由美子もお互いが好き。今、素直な感情を大事にしようよ。」 「えっ?…うん。でも……。」 「でも…は、もういらない…よ。」 オレはそう言って、ここまで近づいた事に抵抗しない由美子にキスをした。 「好きだよ…由美子。」 唇を離すと同時に…そう言って後頭部を軽く撫でた。 「あっ……、えっ?」 「嫌?それなら抵抗するなり…突き飛ばすなりしたらいい…。……好きだよ、由美子。」 そう言ってもう一度ゆっくりとキスへと近づく…。 根拠のない確信があった…、大丈夫。 そして由美子は目を閉じた。 周りに人はいない…、訳ではない。しかし…少数の人間など関係ない。 チュッ、チュッ、チュパ、チュッ。 最後に長めのキスをした………。 オレは由美子とキスをしながらゆっくり目を開けて……由美子の向こう側を見ていた。 (さぁ、こっからどうするかな?)
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加