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妙な空気が流れた。
いや、妙だと思ってるのはオレだけか…。
由美子が驚いたまま、反応しないのだ。普通は…「うそ~」だの「ありがとう」だの反応があるのだが…。
「由美子?」
「あっ?えっ?ゴメン?なんで?」
「ははっ?なんで?好きに理由がいるのなら…説明しようか?」
(やれやれ…、聞かせてとか言うなよ。ってか、こう言えば聞かせて…なんていう奴はいない。)
「いや、まだ……、今日、会ったばかりで…。いきなり、言われても…。」
「信用できない?」
「いや、なんて言うか……。」
(そりゃそうだ…。だって嘘だもの。)
「由美子……。」
オレは由美子の手を取って引き寄せて、出来るだけ顔を近づけた。
「キャ!!えっ?アキくん?」
「由美子、オレの目をしっかり、よく見て……。」
オレは左腕で由美子の腰を抱き右手をの後頭部へ回した。
「由美子……、時間とか場所とかじゃない。好きなんだ、キミを…。」
由美子は何も言わずにオレを見ている。
「オレの目は嘘を言っているか?由美子…、キミが好きだ……。」
「…………なんで、ワタシなんて…。」
「最高に可愛いし…イイオンナだよ。」
「でも……ワタシ……。」
「オレの事キライ?」
「キライじゃないよ…。」
「じゃあ…好き?」
由美子は頷いた。
オレは徐々に顔を近づけていた。
「でも…、ワタシ、彼氏いるし…。わかんないよ。」
(なんとなく、わかっていたさ、そんな事…。)
「だから?関係ないよ。オレも由美子もお互いが好き。今、素直な感情を大事にしようよ。」
「えっ?…うん。でも……。」
「でも…は、もういらない…よ。」
オレはそう言って、ここまで近づいた事に抵抗しない由美子にキスをした。
「好きだよ…由美子。」
唇を離すと同時に…そう言って後頭部を軽く撫でた。
「あっ……、えっ?」
「嫌?それなら抵抗するなり…突き飛ばすなりしたらいい…。……好きだよ、由美子。」
そう言ってもう一度ゆっくりとキスへと近づく…。
根拠のない確信があった…、大丈夫。
そして由美子は目を閉じた。
周りに人はいない…、訳ではない。しかし…少数の人間など関係ない。
チュッ、チュッ、チュパ、チュッ。
最後に長めのキスをした………。
オレは由美子とキスをしながらゆっくり目を開けて……由美子の向こう側を見ていた。
(さぁ、こっからどうするかな?)
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