田中由美子~file1~

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何度かキスを味わって、みんなのいる部屋へと向かった。このまま抜ける程、空気が読めない男ではない。 「由美子、大好きだよ。でも、出来るだけ秘密でいよう。」 「えっ?……うん。」 「まだ、オレ達は会ったばかりだし…、それに…、キミにはまだ、彼氏がいる。オレのせいでキミが…。」 「私は大丈夫だよ。」 「いや、オレのせいでキミが悪く言われたくない。……まだ、2人の秘密にしよう。」 「……うん、ゴメン。……そうか…。わかった。」 (まだ…じやなくて、ずっとだ。) これで、ゆっくり行動できる。ヘタに周りに言われたら、たまったもんじゃない。 周りがどう思っているかは…、関係ない? ホントウのトコロなんて2人しか知らなくていい? …。 真実の心はオレだけしっていればいい。 もっと言えば…。 フルーツの盛り合わせでオレンジだけ喰って捨てるわけない。 バナナもリンゴもパイナップルも…喰えるモノは喰っておきたい。 そういうもんだろう。 タイミングを微妙にずらして部屋に入り、なんとなく時間を過ごした。 カラオケはそれなりに盛り上がって、初日の懇親会としては上出来だった。 「次の学校っていつだっけ?」 「確か、2日後じゃなかった。」 「じゃあ、また、その時やね。」 (初日だしな、こんなもんだろう。) そこから電車に乗る子達を見送って、オレはバスに乗った。 真由美は一人暮らしの部屋が近い為に、同じバスだったが…、電車でも帰れるはずの由美子もバスに乗った。 確かに、路線の違いがあるからバスでもおかしくはない。 しかし、妙な空気の中での三人のバス移動だ。 オレはとにかく喋った。 ヘタ打って…、何も口にできないなんて事にはさせない。 ベストは旨そうな瑞々しいオレンジとリンゴの両方食べてしまう事だ。 (とりあえず…、先に降りる真由美を無事に降ろせば……。) オレは出来るだけ真由美に話をふって、出来るだけ真由美と向き合って話すようにした。 真由美は…構って欲しがる女だ。まだ、ヒクには早い。 由美子は…着いて来る女だ。もう、先手は打った。ちょっと違う方を見れば全速力で追いかけてくるだろう。 そして、真由美を笑顔でバスを降ろす事に成功した。 由美子は外にいる真由美に手を振りながら、逆の手でオレの手を握りしめていた。
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