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思えば、マイは最初からボクといる事を楽しんでいた。
2人で居るときは、どこであろうと、必要以上にくっついていた。
街を歩く時も手を離す事のほうが少ないぐらいだった。
周りの女友達が聞きたくない事を教えてくれるようになってからも、それは変わらず、いやむしろ、余計に激しくなった気がした。
当然、セックスも変わらなかった。
それがボクには謎であり、余計にわからなくさせた。
キスが絡みついてくる。性欲まみれの下半身は淫靡で卑しい音をたてて絡みつく。
「あっ、もう……ああっ、アキ…、一緒がいい、ああっ、あっ、んっ。」
「あぁ、もう………。」
「あっ、あぁっ、イ゙っ、あぁっ、くっっ、一緒に………、あっ、アキぃ、ああっ、もう……。」
「あぁ、……マイ、あぁっく」
ボクとマイが僅かに震え、ボクはマイの上に倒れこみ、彼女は卑しい顔のままボクを抱きしめた。
ボクの背中越しに鏡に映ったであろうマイはどんな表情をしていたのだろう?
ジュブジュブと音をたてながら欲望を抜いてボクはシャワーへ向かった。
「ご飯どうする?どっか行こうか?」
シャワーの扉をあける前にボクは振り返って言った。
マイはまだ突っ伏したままでしばらく何も言わなかったが、ダルそうにボソッと返答をした。
「そうだね……タケの好きなモノでいいよ……。」
………固まった。
今、確かにボクじゃない誰かの名前だった。
聞き間違えか?とも思える程に聞きにくい声だったが、間違えない。
確かに違う誰かへ返答したのだ。
ボクは無言のままシャワーへと向かった。
それでも何も言えない自分が情けなかった。
それでもマイを好きな自分が悲しかった。
それだけにショックは大きく、信じていた気持ちはシャワーで排水口へと流れ、愛が紙一重の憎しみへと変わるのに時間はかからなかった。
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