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改札を降りて少し外れた道を歩く。
何もないこの場所でミルクティーを片手にたわいもない話をしながら、2人で時間を過ごしていた。
そんな時間が、この場所がボクは好きだったんだ。
「さむっ~。はぁ~あ。」
さっきから何度同じセリフを吐いただろう。
目の前の白い溜め息に雨は無表情で絡んでいた。
何をやっているんだろうか?自分で自分が嫌になりそうだった。
イヤホンから流れる音楽が2周目に入った時、周りの空気が凛としたものに変わった。
「……雪かよ…。」
せつなくなりすぎて、思わず座り込んでしまいそうになるのをギリギリでこらえた。
今すれ違ったカップルが何組目だろうか?
あんな風に今日を迎えていればどれだけ楽しかっただろう。
今ボクが睨みつけている、ただ降り積もるだけの雪さえ、笑顔で見れただろうに…。
そんな事ばかり繰り返し考えていた。
いつの間にか流れる音は三度目になり…、ここに来てから二時間を過ぎていた。
「……………もう来ないよ。」
振り返ると美沙が泣きそうな顔で立っていた。
「悪い……、今は優しくしないでくれ…。」
「でも………。」
「あと、ちょっとしたら帰るから…。次に会うときは笑って会うから…、今日は帰ってくれ…。」
「…わかった。じゃあ、1時間以内にして…。んで、帰る時に電話して…。」
美沙の優しさに涙が出そうになるのをこらえて頷いた。
当然のようにマイが来ないまま時間は過ぎた。
この曲が終わったら…。
次の電車が行ったら…。
周りの景色が白く染まった頃、一時間がたっていた。
「はぁ~、…帰ろ。美沙に電話するか…寒いな~。」
涙がこぼれているのかさえ、よくわからなかった。
声になっていないボクの電話を美沙はただ聞いていてくれた。
もう恋なんて…とも思った。
全ての恋愛が憎いと思った…。
約一年後…、大学生になったボクは恋愛をオモチャに変える事となる。
所詮、恋愛なんてゲーム。
楽しんでセックスした方の勝ちだろ…。
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