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トウヤの部屋は、物が少ない。
寝室にはベッドとタンス。
居間にはソファーとテーブルとテレビしかない。
台所も付いてはいるが、いつも食堂で食べるために、冷蔵庫には飲み物しか入っていない。
そんな質素な部屋のソファーで、トウヤは柄にもなく頭を抱えて悩んでいた。
悩ませている元凶は、今はトウヤの隣でテレビを見ている。
呑気に「この映画、面白い!」と言いながら屈託なく笑顔を振り撒いてくる。
…こっちの気も知らないで笑ってんじゃネェぞ!
頭を抱えながら、トウヤは心で叫んでいた。
正直に言おう。
トウヤは、まさかこの部屋にミリィが泊まるとは夢にも思ってなかった。
カエン本部に空き部屋が無い。
トウヤの部屋の近くに空き部屋が無い。
そんな事もない。
それなのに、ミリィは今日からトウヤの部屋で、一緒に生活していくことになった。
何故か?
理由は簡単。
二人が『夫婦』だからだ。
でも、はっきり言ってそれはマズイ。
限りなくマズイ。
絶対にトウヤの理性が持たない。
持つ訳がない。
ミリィはドラゴンだ。
それも、人の姿になればメチャクチャ可愛いドラゴンだ。
…ミリィが一緒に生活するなんて…俺の理性が…襲ってもイイですか!!良いんでしょうか!
悶々と「襲うべきか」「襲わざるべきか」と延々考え続けているなどとは、ミリィには口が裂けても言えない。
そんな事言おうものなら、ミリィに喰われてしまうかもしれない。
それなのに、隣の可愛い顔したドラゴンは、こんな事を言ってきた。
「ア~、面白かった!
映画って良いわね!
さて!私、体を洗いたいんだけど、こっちの世界では水浴びとかはどうやってするの?」
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