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マスターは極力、国には入らない。
なんでも、“人間が嫌い”だからだそうだ。
「でも、よかったですね。いつかの國のように色々検査されなくて」
「あれは最悪だった。二度と行かない。」
マスターは苦々しそうに言った。
あの時のマスターは…いや、長くなるから止めておこう。
この國の中心市街地のような大通りに差し掛かると、私はマスターと喋るのを止めた。
前回國に入ったとき、マスターと話していたら、危うく連れ去られそうだったからだ。
バイクを押しながら、マスターは嫌そうな顔で大通りを進んだ。
私はというと、荷台に乗ったまま、あたりを見回して楽しんでいた。
通りの両側にはいろいろな店や露店が立ち並び、大声で客寄せをしていた。
しかし、私の楽しみはすぐに終わりを告げ、マスターは裏路地へと入っていった。
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