修理士のいる國

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裏路地にある一軒の店の前で、マスターはバイクを停めた。 そしてスタンドを掛けると、その店へと入っていった。 私はいつもは荷台の上で待っているのだが、今回は珍しくマスターが私を呼び、一緒に店に入って行くことになった。 カランカラン… ドアを開けると、ベルが鳴って、客の来訪を店に教えた。 店の中は一点の光が作業机を灯しているだけで暗く、火薬の匂いが立ち込めていた。 壁際にはダンボールや木箱が山のように積まれて、圧迫感を来るものに与えていた。 「いらっしゃい。…おや。ブラックさんかい?」 「久しぶり、ブランクのじいさん。死んでなくてよかった。」 「わしはまだまだ若いつもりだがね!」 しばらくして出て来たのは、白髪でわずかに腰が曲がっている、作業着を着た70代くらいの男だった。 「用件は…いつもと同じ、かね?」 「それ以外に俺がこんな狭いところに来る理由は無いね。」 マスターは作業机にさっき試し撃ちをしていた銃…“ボレロ”という名前の銃を出した。 白髪の男は“ボレロ”を丁寧に手に取ると、一通り眺め、時にはいじり、“ボレロ”を調べた。 と、思う。何せ、私の位置からでは表情しか見えない。 「これまた…酷いね。また無茶なことをさせたんだろう。そこら中がガタガタだ。」 「それをアンタが修理するんだろが。んじゃ、後はよろしく。」 マスターは出口へと歩くと、後ろ手に手を振った。 私も急いで後を追う。 「あぁ。流星はここに居て、寂しいじいさんの話相手にでもなってやれ。」 マスターはドアに手を掛けて、私を振り返って言うと、さっさと出て行ってしまった。
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