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ブランクは再び机に向かうと、道具を駆使して“ボレロ”をいじり始めた。
「しかし驚いたよ。彼が最後に来たときに、『喋る犬を見に行く』と言っていて…話には聞いていたが、本当に居るとは思わなかったよ。」
そう言ってブランクは笑った。喋っていても、手元は狂わず、確実に“ボレロ”を修理していく。
「ブランクさんは、マスターの名前をご存知なんですか?私は『無い』と聞いていたんですが。」
「あぁ。ブラックさん、と言ったことかね?
あれは私が勝手に呼んでいるだけさ。最初に会ったときに私も『名前は無い』と言われてね。
黒ずくめの格好をしていたので“ブラック”と。
その時彼に言われたよ。
『悪くない名前だけど、イマイチ物足りない』ってね。それ以来、ずっとそう呼ばせてもらってる。
彼はこの銃を修理する時にしかウチには来ないがね。
…参考になったかい?」
「えぇ、貴重なお話ありがとうございます。何せマスターは自分のことは話さないですし、何を考えているかもわからないし…」
「はははっ彼と付き合うのにはそれくらいの覚悟が必要ということさ」
それから銃が直るまで、私たちは話を続けた。
私とブランクは中々気が合い、話は途切れることなく続いた。
ブランクの話から、私はマスターの知らなかった一面を聞くことが出来た。
その話はまた今度するとしよう。
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