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「さあ、できたぞ。」
カランカラン…
ブランクがそう言うのと、店のドアが開くのはほぼ同時だった。
「出来たか?じいさん」
「毎度のことながらピッタリだ。ガタはちゃんと直った。だが、あまり無茶はするなよ。次は――」
「“次は直せんかもしれんよ”…だろ。
んじゃ、修理代といつもの火薬の料金。」
そう言うと、マスターは机の上にお金の入った袋を置いた。
「はいはい、まいどあり。」
ブランクはその袋を受け取ると、店内の木箱の一つから、マスターのバイクに積んであった銀色の箱と同じものを数箱、マスターに渡した。
「それじゃ、また修理よろしく。それまで死ぬなよ。」
「また会いましょう、ブランクさん。」
私とマスターがそれぞれ挨拶をすると、ブランクは笑顔で手を振った。
「お前さんも、死なないように。」
そして私たちは、修理士の居る國を出た。
食料を買い込んで、少し重さが増したバイクは、岩ばかりの山岳地帯をゆっくりと走る。
「マスター」
「何?」
「少しだけの無茶なら…私は許してもいいですよ」
「…あっそ」
バイクは砂埃を引きながら、スピードを上げた。
=終=
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