修理士のいる國

9/9
前へ
/100ページ
次へ
「さあ、できたぞ。」 カランカラン… ブランクがそう言うのと、店のドアが開くのはほぼ同時だった。 「出来たか?じいさん」 「毎度のことながらピッタリだ。ガタはちゃんと直った。だが、あまり無茶はするなよ。次は――」 「“次は直せんかもしれんよ”…だろ。 んじゃ、修理代といつもの火薬の料金。」 そう言うと、マスターは机の上にお金の入った袋を置いた。 「はいはい、まいどあり。」 ブランクはその袋を受け取ると、店内の木箱の一つから、マスターのバイクに積んであった銀色の箱と同じものを数箱、マスターに渡した。 「それじゃ、また修理よろしく。それまで死ぬなよ。」 「また会いましょう、ブランクさん。」 私とマスターがそれぞれ挨拶をすると、ブランクは笑顔で手を振った。 「お前さんも、死なないように。」 そして私たちは、修理士の居る國を出た。 食料を買い込んで、少し重さが増したバイクは、岩ばかりの山岳地帯をゆっくりと走る。 「マスター」 「何?」 「少しだけの無茶なら…私は許してもいいですよ」 「…あっそ」 バイクは砂埃を引きながら、スピードを上げた。 =終=
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加