熱帯夜の華

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私が体温調節に励んでいると、バイクはだんだんと速度を落とし始めた。 またか… そして結果、道の真ん中で止まる。 「マスター。風が止みましたよ。走らないと逆に暑いですよ?」 横を向いていた私は前を向き、ハンドルに伏せているマスターの背中を前足で叩いた。 「お前はいいさ。でもこっちは朝からぶっ続けで、こんな暑ぃ中運転してんだぞ。 おまけに“ヴァロラ”の半分は黒だろ?黒ってのは、日光を吸収するから熱が篭るんだよ。 そのうちオーバーヒートするぞ。……暑ぃ……」 ちなみに、“ヴァロラ”というのは、この白黒バイクの名前である。 そんなことより今は、どうやってマスターを更生させるか、だ。 「だからってマスター、こんな炎天下に止まってると余計に暑くなりますよ。」 本日何度目かのセリフを言いながら、マスターの背中をさらに叩いた。 その呼びかけにマスターは私の方に振り向いた。 なんともやる気の無さそうな顔をしている。 「………俺の視界に入るな。見てるだけで暑苦しい。」 「振り向いたのはマスターでしょう!? 私だって好きでモコモコしてるわけじゃありませんし!」 「…はぁ…」 「ため息尽きたいのはこっちですよ!」 私から森へと目をやるマスター。 その瞬間、急にやる気を出したように、ハンドルから起き上がった。 「どうしましたかー?暑さでついにおかしくなりましたか?」
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