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マスターが廃墟から出た瞬間、30近い数の銃口が向けられた。
しかし、そんな状況にも構わずに、服に付いた砂埃を払うマスター。
銃口はすぐに下げられ、一人の男がマスターの前に歩いて来た。
「しっかりと“仕事”は果たしたのか?」
「果たせなかったら死んでるだろ。
お前等の言う“廃墟に巣食う薄汚い盗賊”は全員死んだ。
逃げた奴らも、お前等が全員入り口で仕留めたみたいだし。」
そう言ってマスターは廃墟の唯一の入り口を振り返った。
そこには、入り口を塞ぐかのように男たちの死体がならんでいた。
「聞いてたより数が多かった。お陰で死ぬところだった。報酬は三倍。じゃないと割りに合わない。」
「…ふっ…腕利きの“殺し屋”が死ぬところ、か。
“期待外れ”だったと言うことなら、報酬を減らさせてもらう。」
「……知っててオレを行かせて、タダ働きさせようってか。聖職者のすることじゃないだろ。」
マスターは目の前の、真っ白な服に十字を掲げた司祭を睨み付けた。
そんなマスターをあざ笑う様に、背を向けて歩き出す司祭。
「まぁ、働きに免じて報酬は払ってやる。それを受け取ったらとっと、うぐぁっ」
言葉にならない言葉を残して、司祭の頭は膨らむようにして破裂した。
その肉片…頭皮やら髪やら脳やら、噴水のように湧き出る血やらを辺りに撒き散らして、上顎を含めた顔半分を失った司祭は、地面に倒れた。
真っ白な服は、一気にどす黒い紅へと染まっていった。
「“薄汚い盗賊”の頭が、“俺達の殺しを依頼した奴を殺してくれ。報酬は俺達が今まで巻き上げてきたモノ全部やる”ってさ。
アンタが払う30倍を払われちゃ、誰だってこっちを優先するだろ?」
硝煙の上がる“ボレロ”を手に、マスターは言い放った。
状況を理解した司祭の護衛たちは、次々に銃を捨てて振り返りもせずに逃げて行った。
たった今盗賊の一団を消してきた男が目の前で銃を構えていれば、誰だって逃げ出したくなるだろう…
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