Reverse Story. <-Ⅶ>

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城があった。 ボロボロに崩れて、威厳を無くした城が。 國(クニ)があった。 誰も知らない山奥で、ひっそりと廃れていく國が。 見るも無残な、古城聳え立つ國の亡骸で、動く影が一つあった。 その影は、黒髪と灰色の瞳をしていて、数日前に15才になったばかりの少年だった。 “死”を迎えている廃墟の中で、少年は一人、瓦礫の上を歩いていた。 そして時折瓦礫を漁っては、使えそうな鉄屑を拾い集めていた。 しばらくの間、その作業を繰り返して両手一杯に鉄屑が集まると、少年は歩いて来た道を戻っていった。 ボロボロに崩れた民家の中に、一軒だけ他に比べれば“マトモ”と呼べる家があった。 家の前には、瓦礫を退けて作られた円形のスペースがあり、この辺りでは唯一、地面が見える場所だった。 そのスペースには、作りかけのバイクが一台、スタンドを掛けて停めてあった。 集めてきた鉄屑をその前に置いて、少年はバイクを作り始めた。 少年は初めから、この“死んだ國”に居たわけではない。 それに、数日前までは“独り”でも無かった。 少年はここに連れてこられ、二人で暮らしていたのだ。 もう一人は、数日前に死んだ。 その時少年は、『珈琲の飲みすぎだからだ』。そう思った。 突然一人にされても、少年はさして悲しまなかった。 涙なんて、あの時にもう枯れていたのかもしれない。 もしかしたら、突然すぎて、感情が付いて行かなかったのかもしれない。
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