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城があった。
ボロボロに崩れて、威厳を無くした城が。
國(クニ)があった。
誰も知らない山奥で、ひっそりと廃れていく國が。
見るも無残な、古城聳え立つ國の亡骸で、動く影が一つあった。
その影は、黒髪と灰色の瞳をしていて、数日前に15才になったばかりの少年だった。
“死”を迎えている廃墟の中で、少年は一人、瓦礫の上を歩いていた。
そして時折瓦礫を漁っては、使えそうな鉄屑を拾い集めていた。
しばらくの間、その作業を繰り返して両手一杯に鉄屑が集まると、少年は歩いて来た道を戻っていった。
ボロボロに崩れた民家の中に、一軒だけ他に比べれば“マトモ”と呼べる家があった。
家の前には、瓦礫を退けて作られた円形のスペースがあり、この辺りでは唯一、地面が見える場所だった。
そのスペースには、作りかけのバイクが一台、スタンドを掛けて停めてあった。
集めてきた鉄屑をその前に置いて、少年はバイクを作り始めた。
少年は初めから、この“死んだ國”に居たわけではない。
それに、数日前までは“独り”でも無かった。
少年はここに連れてこられ、二人で暮らしていたのだ。
もう一人は、数日前に死んだ。
その時少年は、『珈琲の飲みすぎだからだ』。そう思った。
突然一人にされても、少年はさして悲しまなかった。
涙なんて、あの時にもう枯れていたのかもしれない。
もしかしたら、突然すぎて、感情が付いて行かなかったのかもしれない。
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