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これからどうしようか、と考えたときに、少年はもう一人との会話を思い出した。
『オレは“世界”を見て、自分に一番いい名前を付けるんだ!』
今が、その時だと思った。
もう一人がくれた、この“世界”から出て、自分を見つける時だ、と。
だから少年は、もう一人が残した壊れたバイクを修理・再生を始めた。
しかし、この“死の國”では、ろくな部品は手に入らない。
使えるものを見つけること自体が難しい。
とりあえず、近くの國まで辿り着ければいい。
そう思って作り始めたそれは、プロが作っているようだった。
少年は、もう一人が珍しく褒めるほどの器用さを持っていた。
それに加えて、物覚えも早い。
そのお陰で、少年はもう一人の教えも確実に覚えてきたし、大抵のことは一人で出来た。
バイクが完成するまでの間、少年の頭にはもう一人の顔ばかりが浮かんだ。
たくさんのことを教えてくれて、もう一人は親同然だと思っていた。
そう思うと、今更悲しみが込み上げて来て、でも涙は零れそうで零れなかった。
そのたびに少年は目を擦って、悲しみを振り払った。
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