盗難された國

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とある國(クニ)で、私達は休養することになった。 大の“人間嫌い”のマスターが、突然こうすることになったのは、天候のせいである。 季節は冬。 この國一体は先日大雪にみまわれ、國外は深々とした雪原。 バイクで旅をするマスターにはいささか不利な状況である。 よって、仕方なく休養に至るわけだ。 かくいう私は、マスターと一緒に旅をしてる犬である。 白と灰色の毛を持っていて、毛並みはたぶんモコモコ。 背中に灰色の毛が筋のように走っているのが特徴である。 名前は流星(リュウセイ)。 そんな私が一緒に旅をしているのがマスター。 黒い髪に灰色の瞳。そして寒そうに黒いロングコート着込んでいる。 マスターは名無し、である。 なので私は適当にマスターと呼んでいる。 「あーやだやだ。早く溶けろよ雪…」 そう言ってマスターは白い息を吐いた。 「自然相手じゃ、さすがのマスターも根をあげるんですか?」 「別に。」 そっけないところを見ると、図星ですか。 マスターも素直じゃないですね。 「…お前さ。絶対今、オレのことバカにしたろ」 「してませんよ。」 「嘘吐け。嬉しそうに尻尾振ってるだろ」 犬っていうのは、時々不便なものである。 別に好きで振って、自己表現しているわけではないのだ。
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