盗難された國

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私は怖くて、狭い檻の中で思いっきり体を丸めた。 売り飛ばされて見世物にされるなんて絶対ヤダ!! 「で?いくら出すって?」 私を盗んだ男が女に尋ねたのだと思う。 「んーとぉ。本物ならいくらでもくれてやるって」 その時、再びドアが開く音がした。 「いらっしゃーい!この人よ、この人。ねぇ~犬なんかよりもっといい“モノ”買わない?」 浮かれはしゃぐ女の声に、カイテは答えない。 それどころか、ツカツカと私の方に近寄ってくる。 あれ?とまった? ガンッ ひぃぃぃ!!! 突然檻が斜めに傾いた。 「おい。なんか喋れ。」 怖くて声が出ないんですが!? 私が黙っていると、声の主がさらに一撃加えた。 ガンッ 檻はもう80度近く傾いてしまい、必死に絶えていた努力も空しく、私は仰向けにされてしまった。
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