盗難された國

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私は覚悟を決めて、閉じていた目を開けた。 さよならマスター…きっと二度と会えませんね… ・・・・・? 私が幻覚を見ているのでなければ、目の前で檻に足を掛けて、「こいつ生きてんの?」とか男に向かって喋っているのはマスターだ。 マスター!!! 私は歓喜も程々にマスターに声をかけようとした。 が。 ガコンッ 「ぎゃっ!!!」 マスターが掛けていた足を急に降ろしたため、あえなく中断された。 仰向けだった私は、反動で思いっきりお腹を打った。 い…イタイ… 私の悲鳴に気が付いたマスターが、振り返って一言。 「なんだ。生きてんじゃん。」 「…謝罪しろ、謝罪。」 「何を?」 マスターはケロッとしながら、檻の留め金を外した。 やっと解放された私は、安堵で尻尾を思いっきり振った。 「おーよしよし。」 そんな私の頭をバカにしたような口調で撫でるマスター。 ふんっ…悔しいですけど、今は許してあげますよ!
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