彼女の旅

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「はぁぁぁ…」 旅に出て、何度目かのため息が出た。 原因はいろいろ。 旅は大変だし、危ない目に遭うし、疲れるし。 …お金、ないし。 でも一番の原因は、 “捜し人が見つからないこと” 「…やっぱり写真が古いせいかな?」 私の手にあるのは、もう8年くらい前の写真。 写っているのは、10歳の私と、私より一つ年上のそれまで幼馴染みだった少年。 二人が笑顔で並んでいるこの写真は、二人で遊んでいる時に通りがかりの旅の写真家が、翌日11歳になる彼の誕生日プレゼントとして、彼と私にくれたものだ。 私は彼の11歳の誕生日をまるで自分のことのように楽しみにしていた。 前日の夜も、胸の高鳴りがうるさくて、貰ったばかりの写真を月明かりで何度も眺めてた。 でも。 結局彼の誕生日を祝う事無く、終わってしまった。 夜更かしのせいで寝坊した私に伝えられたのは―― “今朝早くに、彼が死んだ” ということだけだった。
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