彼女の旅

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冗談にしては、悪すぎて 現実のくせに、現実感が無さ過ぎた。 どこを捜しても、彼は居なくて 大人たちに聞いても、皆口を閉じるだけ。 10歳の私は、彼の名前を叫んで、捜すことさえできなかった。 だって、彼の名前を知らなかったから… 何も出来ない自分に、 突然居なくなってしまった彼に、 私はどうしようもないくらい悔しかった。 11歳になった彼に、10歳の私はどうしても伝えたいことがあった。 『わたしが11才になるまで、遠くに行かないでね? どうしても、いいたいことがあるから…ね?』 私達が生まれ育った國(クニ)では、11歳は第一次成人。 簡単に言えば、一定のことは自分で決めて良い。という意味だ。 だから彼がどこか遠くの場所に行くのも自由だった。 小さな私は、そんなちっぽけなことが嫌だったのだ。 もっとも、大事なのは後半部だけど。 それも結局言えずじまいで―― 彼の誕生日にこれまでに無いくらい泣いた。 前日とは違う目で写真を見るたび、涙が溢れ出て、止まることは無かった。
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