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それから6年が経った頃、私は事実を知った。
お守り代わりに持っていたあの写真を、挟んでいた手帳ごと落としてしまって、それを國に訪れていた旅人が拾ってくれたのがきっかけだった。
気が合って話しているうちに、写真に話がいって、私は子供の頃のことを話した。
いつも一緒に遊んでいた幼馴染のこと。
彼は11歳の誕生日に突然死んでしまったこと。
彼は――私に“ヴァイス”という名前をくれたこと。
いろいろなことを話し終えると、旅人は『写真を見せてもらってもいいですか?』と尋ねてきた。
私が疑問に思いながら差し出した写真を、旅人はじっと見つめた。
しばらくして旅人は写真から目を離すと、持っていた鞄から紙の束を取り出した。
その紙には一枚一枚、人物写真と数字と私の知らない言葉が書かれていた。
その中の一枚を取り出して、旅人は『写真ではよくわかりませんが…』と言った。
ちょっと荒い写りのその写真には、
間違いなく、彼が写っていた。
例え成長していようと、間違えるはずがない。
この闇のように黒い髪と、淡く綺麗な灰色の瞳だけは、何も変っていなかったから。
私の目から、
彼の最後の誕生日以来の涙が静かに溢れた。
“彼が生きてる”
それを知った私は、いてもたってもいられなくなった。
旅人へのお礼も早々に、私は勢いよく走り出した。
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