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何処へ行くでもなく、私は走り続けた
衝動があるのに、それが何か分からない
何も考えられない頭の中で
彼との思い出だけが鮮明に甦る
―おまえさ、なんで髪の毛白いの?
初めて会った日。第一声がそれだった。
―でも、雪みたいできれいだな
他の子はね、気味悪がって近づかなかったんだよ。
だからね、褒められたのはこれが初めてだった。
それからなんだよ?
私が短かかった髪を伸ばし始めたのは…
―昨日本で読んだんだけど、どこかの國の言葉で、白は“ヴァイス”って言うんだって。
お前にぴったりだろ?
あの時の貴方の笑顔を私はいつまでも覚えてるよ
数少ない彼との思い出は
忘れかけていた10歳の私を思い出させた
私はようやく足を止めて、上がる息を必死に整えた。
最後に一つ大きく深呼吸して、空を見上げた。
どこまでも続く青空に、真っ白な雲が流れて行く。
この空の続く何処かに、貴方は居るの?
私は一つ、決心した。
それなら私は、
貴方に会いたいよ…
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