修理士のいる國

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バァンッ バァンッ 岩ばかりの山岳地帯、その一角で、破裂音が響いていた。 重低音のそれが響くたび、そこにある岩に穴があいていく。 穴と言っても、中心から円状に岩をえぐるようにあいていった。 しばらくして音が止むと、私は塞いでいた耳を広げると、マスターの足元に歩み寄った。 「どうですか、マスター?」 「やっぱり駄目。修理するしかねぇか。」 そう呟いたマスターは、持っていた銃をベルトに納めた。 マスターには名前が無い。 その他本人に関していえば、黒い髪に灰色の瞳をしていて、黒いジャケットを着て、その下には真っ白なワイシャツで、黒いズボン。 考えどころか、性格すらわからない全く謎な人間である。 そんなのでも、とりあえず私の主人である。それ故に私は“マスター”と呼んでいる。 マスターは一応、旅人である。黒と白のなんともモノクロなバイクで“世界”を見て回っている。 今はそのバイクを脇に停めて、銃の試し撃ちをしていた所だ。
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