始まりの終わり、終わりの始まり

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エルフ暦3184年=地球暦(西暦)2104年12月25日 この日、僕は多くの大切なモノを失った。 一つは今、眼の前にある。 眼の前の《ソレ》は、すっかり冷たくなってしまい、もう二度と笑うことも泣くことも怒ることもできなくなってしまった。 いや違う。僕が―僕自身がこの手で…できなくさせたのだ。 全ては―いや、全てというのはおこがましいだろう。 ソノほとんどは、僕の所為だ。だから今、こんなにも苦しんでいる。 失ったモノの二つ目は他人からの信頼だ。 コレは生きていくためには最も大切なコトであるが、今の僕には関係ないだろう。 三つ目は《僕自身》だ。 僕自身の《ココロ》だ。 目の前の現実を直視することができず、未来(さき)のことも考えられず、ただアタマに浮かぶのは、過去の想い出ばかり…。 四つ目は……もう止そう。一つ一つ挙げていてはキリがない。 もう、僕のココロは壊れかけている。 彼女を失ったコトで修復できないキズができてしまった。 僕のココロが壊れる前に、僕が僕である内に、彼女のコトを、彼女と僕の想い出を此処に記そう。 いつか、いつの日か誰かが見つけて読んでもらえるかもしれない。 ……絶望の中でたった一つだけ浮かんだ疑問がある。 非常に陳腐な疑問ではあるのだが。 『このセカイはホントウにホンモノなのだろうか』
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