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プルルルルル…プルルルルル…
僕がしばらくの間俯いていると、ふいに電話が鳴り始めた。
嫌な予感を覚えつつも、受けないと後でひどい目に遭うので僕は受話器を取り、耳から少し離れた場所に固定した。
「はい、もしもし。こちらディズ……」
『はい、もしもし。…っじゃなーーーーーい!!』
『あんたさっきのニュース見た!?見たでしょ!!見たのに何で連絡寄越さないの!!っこのバカ!!』
電話からはヒステリックな女の声が大音量で響き渡っていた。
……こっちは最初の声を聞いた時点で腕を目一杯伸ばしてるのに、それでも耳がジンジンするよ。
「あ~、ツル姉ぇか。僕は今日は休みでね、実家に居るんだけど……」
『うっさい!!今すぐ会社に来なさい!!マスコミの数が多すぎて広報部じゃ対応仕切れないの!!』
『もう一度言うわよ!今すぐ来い!!以上!!』
ツー…ツー…ツー…
まくし立てられた後、一方的に電話が切られてしまった。
……僕は二言位しか言ってないのに。
顔を正面に向けると、妹が呆気にとられていた。
が、数秒もするとその顔にはイヤな笑顔が広がっていった。
「ふ~ん、なるほどなるほど。そういうことか」
「ん?うん、そういうことだから、会社に行ってくるよ。せっかくのイヴなのに家にいられなくてゴメンね。って父さん達に伝えといて」
妹はますます笑みを深めて、首を大きく縦に振った。
「はい、は~いっと。そいじゃ、未来のお義姉さんによろしくね~」
「なんだかものすごい勘違いをしてる気がするけど……まぁ、いいや。行ってきます!」
「行ってらっしゃーい。お土産待ってるね~」
明るすぎる妹の声に送られつつ、玄関を出て何歩か歩いた後、左手を正面にかざして会社までの直通ゲートを開き、その中に入っていった。
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