3人が本棚に入れています
本棚に追加
「わざわざこんな山奥に何をしに……ん?
あっ!?そうか!」
シロクマは何かを思い出した様だ。
「『真実の月』かっ!?」
ピートはピタッと動きを止めた。
「シロクマさん、『真実の月』を知ってるの!?」
「小さい頃に見たことがある。
そうか…あれからもう10年か…。」
シロクマは物思いにふけるように、夜空を見上げた。
「凄い凄い!
見た事あるんだ!
その『真実の月』が今日見れるんだ!
10年に一回しか見れないから、僕たちウサギにとっては、最初で最後のチャンスなんだ!」
ウサギの寿命は8年~10年と言われている。
「残念だったな。
『真実の月』が見られる、真実の丘は、もうすぐそこなのにな。
この穴からじゃ、月は見えないぜ。」
「だからこの穴を抜け出すんじゃないか!」
「もう無理だろ。
お前の作った階段を見てみろよ。」
シロクマは雪の階段を指差した。
ピートの努力もむなしく、階段は1メートルも満たない高さまでしか完成していない。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
絶対に『真実の月』を見るんだ!」
ピートはそう叫ぶと、雪の階段へと駆け出した。
階段の頂上まで行くと、力を込めて垂直の壁へと飛び付いた。
一歩、二歩…壁を蹴り上がった。
最初のコメントを投稿しよう!