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しかしそれが限界…。
穴の底へと引き戻された。
「くそ~!」
ピートは叫ぶと、また壁へと立ち向かった。
何度も何度も立ち向かった。
落ちた時の衝撃は、雪が和らげてくれるけど、壁を蹴り上げる足の裏は傷付いて、痛みが増していった。
「もう限界だ…。」
そう言ってシロクマはのっそりと立ち上がった。
限界というシロクマのつぶやきを、ピートの大きな耳は聞き逃さなかった。
「騒ぐ+限界=食べられる」
ピートの頭の中で、方程式が完成した。
しかし、ピートは怯えるより先に、立ち上がったシロクマの姿を見て驚いた。
座っていた時は気付かなかったけど、シロクマの身体は衰弱し、痩せこけていた。
「シロクマさん…いつからこの穴にいるの?」
シロクマがのそのそと近づくのに合わせて、ピートも同じスピードで後ろに下がった。
「1年以上…。」
「1年以上っ!?」
ピートはシロクマが腹ペコなのを確信したと同時に、食べられる事も確信した。
「何故そんなに『真実の月』が見たいんだ?」
シロクマは近付きながら訪ねた。
「理由なんてないよ。
小さい頃からの夢なんだ。
お父さんとお母さんも見たんだ。
この世の物とは思えないほど美しいって言ってた。」
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