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「たぶん、先生が覚えてないんじゃない?それとも、途中から誰かが全部作った話とか。噂なんてそういうもんだよ」
人へ話し、またそれを他の人へ…語り続ければ、どこかで人間の記憶は部分的に抜ける。
そして自分流に作り直し、また語り続け…いつしかまったく別の話になることが多い。
「ふーん…そっかぁ。で、その“ナニか”を目撃した先生は誰なの?」
目撃者の先生から話を聞けば早いんじゃないんだろうか。
そう思って問い掛けると、結麻は呆れたようにため息をついた。
「それが…」
☆☆☆
『聞いた?昨日の話』
『うん、知ってる知ってる、屋上の…』
『そうそう。なんかさぁ、私は鬼みたいな顔した男がいたって聞いた』
『えっ、髪の長い女の人じゃないの?』
『ええっ…おかしいなぁ…』
ほんとだ…バラバラ…
授業中ですらその話で持ちきりだ。結麻の言ったとおり、クラスの子たちの“ナニか”の存在はバラバラだった。
『じゃあ、昨日の話の先生って誰?』
『あぁ、その先生さぁ…今病院で寝込んでるらしいよ。よっぽど怖かったに違いないわね』
そう、その先生は翌朝屋上で倒れているのを発見されたらしい。
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