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「まだ腑に落ちない事がたくさんあるみたいだな、カノン。」
ゆらゆら。カノンの周りをタイムが飛ぶようにして歩く。よく見ると、彼の歩き方は地面に足がついていない。やっぱりこの子、地球人じゃないのかも。
「夢の入口と言われても、わたしは何をしたらいいのか…これはRPGか何かなの?魔物を倒すの?仲間を増やすの?」
確かに、聞きたいことが山ほどある。
一気に吐き出すときりがないから、一言一言を慎重に紡ぐように、カノンは尋ねた。
「まんまさ。あんたはこれから布団の中で夢を見る。昨日見た夢を覚えてるか?眠りに落ちたあんたはこの入口を通って、夢を拾い、翌朝目覚める。毎晩の夢を俺が手配してやってるって訳さ。簡単だろ。」
うーん…昨日の夢は何だったっけ。
よく印象に残った夢ですら、覚えているのはその断片でしかないのだ。しかも夢なんて、すごく変で、脈絡もなくて、場面と場面の繋がりが全然見えないもので…
「まあ、あんたはろくに覚えちゃいねぇだろうがな。」
仕方ない、といった様子でタイムが頷く。
その横顔はどこか大人びていて、さっき14歳に見えた彼とは別人のようだ。
この子はいくつなんだろう。
「待って、ここは夢の入口…わたしはこれから夢を見る。あなたはタイム、夢の門番。わたしはあなたを頼ればいいのね?」
「そのとーり。ただし、夢の世界を歩くのはあんただけだよ。毎晩毎晩何億人と通る扉だ、俺はずっとここに立ってなきゃいけないんでね。」
――――ぴちゃん。
何もないようで、何かが見える空間。
ふたりの影を包んで、時だけが流れていく。
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