プロローグ

3/3
前へ
/127ページ
次へ
それを見た少女は、少し不機嫌な顔をして、少年の頭の上に拳を構えた。 少年が頭を上げた時、頭が少女の拳とぶつかり、鈍い音がした。 「イタっ!」 「ヒツジさん、きらいっ!」 「え?」 ズキズキする後頭部を押さえながら、少年は少女を見た。彼女は靴下のままレジャーシートから出て、少年の前に仁王立ちしている。 「ヒツジさん、また“おじょーさま”っていった!」 「あ……申し訳ありません」 「けーごもつかわないで!」 「う……」 押し黙ってしまった少年に、少女はしゃがんで下からの目線で笑った。 「わたしは、のぞみだよ!“おじょーさま”じゃなくて、のぞみって呼んで!」 少女、のぞみの満面の笑みに、少年はふっと顔を緩めて言った。 「はい。では、私の事は“すばる”とお呼び下さい」 「あ、またけーご……」 すばるは、まだ気に食わない顔ののぞみを撫でた。 「のぞみ……これだけは、譲れないのです。申し訳ありません」 本当に悲しそうな目をしたすばるを見たのぞみは、すばるの空いている手を握った。 「じゃあ、ふたりでいる時だけでいいから」 のぞみが、お願い……と手を握る強さを強めると、すばるは切なさそうにのぞみを見つめて言った。 「それなら……。宜しく、のぞみ」 「よろしくね、すばる!」
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加