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それを見た少女は、少し不機嫌な顔をして、少年の頭の上に拳を構えた。
少年が頭を上げた時、頭が少女の拳とぶつかり、鈍い音がした。
「イタっ!」
「ヒツジさん、きらいっ!」
「え?」
ズキズキする後頭部を押さえながら、少年は少女を見た。彼女は靴下のままレジャーシートから出て、少年の前に仁王立ちしている。
「ヒツジさん、また“おじょーさま”っていった!」
「あ……申し訳ありません」
「けーごもつかわないで!」
「う……」
押し黙ってしまった少年に、少女はしゃがんで下からの目線で笑った。
「わたしは、のぞみだよ!“おじょーさま”じゃなくて、のぞみって呼んで!」
少女、のぞみの満面の笑みに、少年はふっと顔を緩めて言った。
「はい。では、私の事は“すばる”とお呼び下さい」
「あ、またけーご……」
すばるは、まだ気に食わない顔ののぞみを撫でた。
「のぞみ……これだけは、譲れないのです。申し訳ありません」
本当に悲しそうな目をしたすばるを見たのぞみは、すばるの空いている手を握った。
「じゃあ、ふたりでいる時だけでいいから」
のぞみが、お願い……と手を握る強さを強めると、すばるは切なさそうにのぞみを見つめて言った。
「それなら……。宜しく、のぞみ」
「よろしくね、すばる!」
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