屋敷の朝

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それから十数年後……。 野想(のぞみ)は18才、須春(すばる)は21才になった。相変わらず野想はフリルのドレス、須春は黒の燕尾服を着ているが、顔つきは2人共変わってしまった。 「お嬢様、お目覚めの時間ですよ」 青を基調とした部屋の天蓋(てんがい)付きベッドに話し掛ける須春は、クリクリとした目から切れ長の鋭い目に。 髪は七三に分けられているが、ワックスで止めただけなので、前髪が顔にかかる。 「ん~、今日は日曜日……」 ベッドの中がもぞもぞと動く。 須春はさらに声を掛けた。 「本日は授業参観日でございます」 「うっそ!?」 ゴンッ! 「~~~」 「ご、ごめん!須春……大丈夫?」 突然体を起こした自分の頭がぶつかってしまった須春に、野想は心配そうに声を掛ける。 野想は幼い頃に比べると、長い栗色の髪は背中を隠し、顔立ちもはっきりした美しい女性になった。
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