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「まったく、貴女はいつも……」
「あ!学校!!」
須春は野想の教育係。反省をしてもらおうと口を開くが、野想がさせてくれない。
「お嬢様、少しはお話を……」
「須春、急いで!遅刻しちゃう!」
「落ち着い……」
「今日はお父様が見に来るのに!」
慌ててパジャマのボタンを外している野想が、泣きそうな顔になった時、須春は野想の肩を強く掴んだ。そして叫ぶ。
「野想!」
須春の叫びに、涙目になった野想の動きが止まった。
荒い息をしている野想を、須春は優しい声で宥(なだ)めた。
「野想……大丈夫。君はいつも頑張っているじゃないか」
「……そう?」
須春の言葉で野想の荒かった息が落ち着いてきた。さらに、須春は野想の頭に手を置く。
「そうだ。今日だって、ちゃんと時間通り……」
須春はニッコリと微笑んで置き時計を手に取った。
が、針は今の時間には有り得ない位置にあった。
一瞬にして瞳を大きくした須春を見て、野想はのんびりと言った。
「あ、この時計、昨日止まったの」
「じゃあ、今の時間は……!?」
須春は自分のポケットから出した懐中時計を見て、先程よりも大きく目を開いた。
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