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登校完了時刻30分前。
女の子が朝の準備をするには、少し時間が少ない。ましてここは田舎の山奥。学校までは車で10分かかる。
「野想!急いで着替えろ!」
「う、うん!」
「じゃあ、着替え終わったら玄関に来い!」
須春が叫んで野想の部屋から出た後、廊下が慌ただしく音を立て始めた。
『朝食はサンドイッチにしてつつんで下さい!あぁ、アナタは急いで車の用意を!』
須春の張り上げる声がだんだん小さくなっていく。
部屋に1人となった野想は、学校の制服を着ながら静かに呟いた。
「執事とは思えない言葉使いね」
長い間野想の執事をしている須春は、2人きりの時は敬語を使わない。野想が昔に頼んだ言葉を忠実に守っている。
「でも、最近は敬語が多いんだよね……」
長い髪を鏡の前で軽くとかした野想は、急いで須春の待つ玄関に走った。
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