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走る車の中で、野想と須春は向き合って座っている。
「お嬢様、先程旦那様と奥様にお電話をしました」
「ふーん」
「本日の授業参観、旦那様も奥様も来られないそうです」
「ええ―。来るって行ってたのに~。もう……じゃあ、学校行く意味無いし……」
野想はシェフが作り直してくれたサンドイッチを食べながら言った。パンくずが付いた野想の口にお絞りを当てながら、須春は困った顔をした。
「またそんな事を……旦那様も奥様もお忙しいのですよ。代わりに家庭教師の糸田先生が来て下さいます」
「私、糸田先生きら~い。学校終わったら、絶対怒られるもん。それに、私の事よく知らない人が授業参観見に来るなんて、つまらないよ。……もう!自分で拭けるってば!」
「おや、失礼いたしました。貴女があまりにもしかめっ面をしていましたので、つい」
そう言ってニッコリ笑う須春に、野想は頬を膨らませてお絞りを須春の手から取った。
「まったく……。あ、そうだ!」
「どうかしましたか?」
須春は野想にアイスティーが入ったタンブラーを手渡した。揺れる車の中でも飲みやすいように、須春がシェフに用意させた物だ。
差してあるストローから一口飲んで、野想は答える。
「須春が授業参観見に来ればいいのよ!」
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