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だが倒れなかった。
隙の無い構えを取りつつ、ワン老人は呟いた。
「ほう、ワシの三度の攻めに耐え凌ぐとは……お主、かなりの使い手じゃな?」
「……ジジイっ!」
血が滲む左肩を押さえながら、男は憤怒の表情で悪罵を紡いだ。どうやら誤解を解く前に、一戦交える気になったようだ。
男の目を見やり、ただの強盗でないことを見抜いたワンは鷹揚に問う。
「うむ、ただの物盗りにしては手強い。お主、名はなんという?」
「クザン!」
名乗りをあげ、クザンは地を蹴り立ててワンに向かう。
短く、それでいて力強く応じたクザンに対し、ワンも己が拳で応じる。
いや――今度は脚も交えた本格的な連撃だ。しかもさらに重い。
たちまち防戦に追いこまれるクザン。だがあまりの打撃に、じきに腕が強張って思うように動かなくなってしまった。
「それそれそれそれそれそれ、どうじゃどうじゃどうじゃあっ!?」
「ぐおっ!」
呵責の無い打撃の嵐に、クザンはなす術も無く防戦を強いられていたが、ついに一撃が防御を掻い潜ってクザンの額を強打した。
「ぐっ――」
苦鳴が途切れた。
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