迷い犬

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「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ――」  雨でぬかるんだ地面に、赤い物が流れていく。それが水溜りと混じって大きく広がるにつれ、物乞いの絶叫も次第にか細くなって行き―― 「…………」  物乞いの体は沈黙した後、一度だけビクリと震え、だらりと四肢が垂れた。  今やただの肉塊となった物乞いの体は、人外の存在に咀嚼される度に揺れ動くだけだ。  うなり声を漏らしながら、死者の肉を食む化生の背後で、大きく水が跳ねる音が響く。  バッと怪物が振り返ると、デザートケープに身を包んだ人影が、雨のカーテンのむこうで亡霊の如く佇んでいた――  どうやら先程の悲鳴を聞きつけて戻ってきたらしい。  鋭く一声咆えると、怪物は死体を放り出して新たな獲物に駆け出している。  うなりをほとばしらせ一気に距離を詰めた化け物は、ナイフのように鋭い爪を、デザートケープを被った獲物の首めがけて打ち振るう――  薄汚れた布切れが宙を舞い―― 「プギャッ!!?」  怪物の喉から無様な悲鳴が漏れた一拍後、怪物の体は泥濘を盛大に巻き上げて地に叩きつけられた。もがく怪物の右目には、いつの間にか短剣の柄が生えている。
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