ダンデライオン

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春が好きだった。 末端冷え性だったし、潤とたんぽぽを見つけたり、シロツメ草をつんで王冠を編んでもらうのが好きだったから。 『シロツメクサ…。』 「ん?」 『ほしいな、王冠。』 「おー。花、あの白いの好きだよな。あいつは秋あたりまで咲いてるけど、摘み行く?今日。」 『ん。』 「川沿いにいっぱいあったから、そこな。」 じゃ、放課後。と言って潤は私を荷台からおろすとしばらく自転車をこいで後ろ姿のまま手を振った。 潤は背中にも目がついてるのかもしれない。 『ありがと、潤。』 潤にこの言葉を素直に言えた試しがあったか記憶を辿る。 たぶん去年の誕生日… かわいくない。 わたし。 そんなことを考えながら教室へ向かい クラスに着くなり廊下側後ろから2番目の席に着席して頬杖をつく。 目すら合わないクラスメイトへたまらず唇をとがらせながら避けるように目線を廊下へ向けると、顔も知らない人たちが何人も通り過ぎ、もっと居心地が悪かった。 .
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