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『結構なお手前で。』
「はは、ありがとう。」
『自由だね。』
お弁当を包み、胸のあたりまである髪の毛をいじりながらわたしは言う。
図書室でお茶を飲んでいいのは先生だけだと思ってた。
『本が好き?』
さして気になったわけでもないんだけど
わたしがこの人のことをたくさん知っていて
たまに思い出したりすることが
とても心地の良いことのような気がした。
「うん。」
昔から。
と山戸くんは返却口に積み重ねられた本へと目線を移し、思い出したようにその中の一冊を抜き取る。
「この本はね、僕が1番のり。」
嬉しそうに本の最後のページに挟まったカードを取り出し「ね?」とわたしに見せた。
本を包む山戸くんの手は、さっき湯呑みを持っていた手と全くちがうひとの手みたいで
なんだかちいさな犬・猫を上手にあやすような
やわらかい手をしてた。
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