輪投げチョコ

3/7
前へ
/92ページ
次へ
『結構なお手前で。』 「はは、ありがとう。」 『自由だね。』 お弁当を包み、胸のあたりまである髪の毛をいじりながらわたしは言う。 図書室でお茶を飲んでいいのは先生だけだと思ってた。 『本が好き?』 さして気になったわけでもないんだけど わたしがこの人のことをたくさん知っていて たまに思い出したりすることが とても心地の良いことのような気がした。 「うん。」 昔から。 と山戸くんは返却口に積み重ねられた本へと目線を移し、思い出したようにその中の一冊を抜き取る。 「この本はね、僕が1番のり。」 嬉しそうに本の最後のページに挟まったカードを取り出し「ね?」とわたしに見せた。 本を包む山戸くんの手は、さっき湯呑みを持っていた手と全くちがうひとの手みたいで なんだかちいさな犬・猫を上手にあやすような やわらかい手をしてた。 .
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加