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『山戸くんの手。』
「手?」
『ん。』
わたしは手の平を山戸くんに差し出した。
「はい。」
輪投げチョコのピンクをわたしに渡す山戸くん。
『違うよ。手、貸して。』
くちの中にチョコを放り投げ、もう一度山戸くんに手を伸ばす。
今度のチョコは噛み砕かずに、舌の上で溶かして食べよう。
「?はい。」
不思議な顔をしながらも何の戸惑いもなくわたしに手を差しだし
「噛みつかないでね。」
と山戸くんは言った。
山戸くんの手を両手で包み、掌を合わせてみたり、指を掴んだりしてみる。
なんかちがう。
『手が変わるよね。』
借りていた手を両手で丁寧に山戸くんのもとへ返す。
「?」
『本をさわる山戸くんの手がいい。』
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