輪投げチョコ

4/7
前へ
/92ページ
次へ
『山戸くんの手。』 「手?」 『ん。』 わたしは手の平を山戸くんに差し出した。 「はい。」 輪投げチョコのピンクをわたしに渡す山戸くん。 『違うよ。手、貸して。』 くちの中にチョコを放り投げ、もう一度山戸くんに手を伸ばす。 今度のチョコは噛み砕かずに、舌の上で溶かして食べよう。 「?はい。」 不思議な顔をしながらも何の戸惑いもなくわたしに手を差しだし 「噛みつかないでね。」 と山戸くんは言った。 山戸くんの手を両手で包み、掌を合わせてみたり、指を掴んだりしてみる。 なんかちがう。 『手が変わるよね。』 借りていた手を両手で丁寧に山戸くんのもとへ返す。 「?」 『本をさわる山戸くんの手がいい。』 .
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加