01 ‥ 君影

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こうでもしないと胸の痛みに顔が歪んでしまいそうだったから。冗談でかわした自分を褒めてやりたい。  その俺の腰に手を回し、彼女は背中に体を寄せてきた。 「そうね。体の相性はバッチリだもんね」 「ちょっと、俺もう無理っすよ。明日も学校あるんすから寝させて下さいよ」 「もー、仕方ないなぁ。なら腕枕で我慢したげる」  俺の腕を枕にしようと無理な方向に引っ張られ、俺は痛くて少し乱暴に自分の腕を取り戻した。 「タツ」 「いてぇっすよユウカさん」 「タツ」  痛む関節を摩り、頑なに彼女の方に向かない俺への呼びかけは、ひどく不安定で揺れていた。  どんなに彼女を自分の中へ入りこめないようにしたって、この震える声に、濡れる瞳に、縋りつく手に、囚われてしまうんだ。  辛い想いをするのは自分だといつだって分かっているはずなのに、俺は彼女への想いを止められなかった。 「泣くなよ、ユウカさん」 「タツが冷たいから」 「そばにいます、ひとりにはしません。だから、泣くな」  今回もまた声を出さずに泣く彼女を抱きしめながら、俺もばれないように少し泣いた。
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