01 ‥ 君影

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 涙の混じるキスは塩辛く、俺たちはまた仮そめの熱に溺れる。  朝起きて隣を見ると彼女はいなかった。冷たくなっているシーツに、彼女がいなくなってから時間が経っていることを知らされた。 「…またかよ」  目が覚めた時に彼女が隣にいたことは一度もなかった。 今までも、そしてこれからも続くであろうその行動は、彼女からの線引きのように感じられた。 彼氏ではなく、セフレなんだという。 こんなことをしなくても十分に分かっている。自分が彼女にとって寂しい夜を紛らすだけの存在だということは。  サイドテーブルの上に置かれたメモには、いつものように二言だけ添えられていた。 ───ごめん、付き合ってくれてありがとう 俺もそのメモをいつものように丸めて捨てた。  俺たちの関係は体を重ね合い、互いの体を慰めあうことを目的としていて。簡単にいえばギブアンドテイクで成り立っている関係なのだ。 なのになぜ、感謝され謝られなければならないのか。  沸き上がる虚しさを埋めるように、俺は彼女の幻影を求めながら冷たいシーツを胸に掻き抱いた。
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