02 ‥ 君始

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 戸を開けばお互いがなにを話しているのか分からず、耳元で叫ばなければいけなかった。 「タツ!俺あの子いく!」 「ちょっ、サトルはえーって!」  人込みに紛れた友人を見失い、それ以前に先輩もどこかへ行ってしまっており、俺は自然に一人となっていた。  顔見知り程度の人には何人にも会ったが会話も弾まず、俺は萎えた気分を持ち直すため外へ出てアルコールを煽った。もともと人の多いところが得意ではないのだ。 「ねぇ、名前なんていうの?」  そうしていると明らかに酔っ払っているであろう呂律の回らない女に逆ナンされてしまった。 「お姉さんの名前は?」 「わたし?わたしはユウカ!優しい歌って書いて優歌ぁー!」 「俺はタツキ。龍が生きるって書いて龍生。みんなはタツって呼ぶけどね」 「ふーん?」  へらへら笑いながら彼女は俺の隣に座った。 短いスカートから下着が見えそうなのは気にしてない、というか忘れていそうだ。だから一応注意してやる。
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