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あのー。
えーと。
中々言葉が出て来なくて
俯いて。
そればっかり繰り返して、無駄に時間だけが過ぎて行く。
暫く黙って俺を見ていた奴がとうとう痺れを切らしたのか、溜め息一つ。
口を開いた。
「そんなに聞きずらい質問なら一生黙っとけ。
休憩終わり。
前向いて教科書開け」
ほら、て。
くしゃり、と頭撫でられて。
不機嫌な筈なのに。
その触り方があんまり優しかったもんだから。
ふい、と顔を上げた。
「ほら。
戻って前向けって」
視線が合って。
口調が少し柔らかくて。
全然怒ってる顔じゃ無くって。
あぁ。
やっぱり綺麗だなぁ。
て思った。
刹那。
とくん
て。
心臓が跳ねて。
喉の奥で詰まって澱んでいた言葉が飛び出した。
「アンタの好きな人って。
だれ?」
ほんの、一瞬。
驚いた顔をしたけれど。
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