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低く、耳許に聴こえる囁き。
「条件は変更済み。
変えない。
ごめんな。
俺は、しずかちゃんの言う事聞いてやれない」
抱き締める腕は
少し震えてて。
…どうしたってんだよ。
つと。
視線の高さを合わせて
覗き込んで来た顔が。
へらり、と笑んで。
「ほんっと。
バカだよなー
しずかちゃんて」
ムカつく事を口走った。
「なっ!」
なんだよ!
笑い事じゃねぇよ!
此方は大事な家庭教師が、辞めるかどうかの瀬戸際だってのに。
その上、言うに事欠いてバカだって?
そのバカが大学合格するまで面倒みるって言ったじゃん!
なに辞めるとか急に言ってんだよ!
少し緩くなった雰囲気に
叩かれた軽口。
けど。
条件は変えないって抜かしやがって。
此方はやっと自分の感情に整理が付いたばっかりだってのに。
なんとかしなきゃ。
俺はこの人を失う。
「だからさぁ。
自分で分かれよ」
なにを分かれと…?
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