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「俺……人殴ったの初めてなんだ……」
仙崎は俯いたまま、ギュッと拳を握る。
思い切り殴ったのだろう、赤く腫れた手が痛々しかった。
当然と言えば当然。
彼のようなお坊ちゃんは喧嘩なんかしたことがないだろう。
なのに不良に殴りかかった。
……私を助けるために。
「じゃあな……」
「あっ、待って!」
思わず呼び止める。
「あの……余計なお世話ってやつだけは言い過ぎたわ。ごめん」
飽くまでも「だけ」だけどね。
仙崎は一瞬目を丸くすると、黙って去っていった。
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