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「あんたはそれでいいの?」
ふっと言葉が落ちてくる。
「お前は、そう言った」
気付けば仙崎は今までのように叫ぶのではなく、落ち着いた声でマイクに向かって話していた。
「俺は、その言葉が忘れられなかった」
確かに私は言った。
あの職員室の応接間から出るとき、捨て台詞のように。
親が勝手に決めた、ただの恩返しでしかない婚約。
利益すらない。まだ政略結婚のほうがずっといいだろう。
そんな馬鹿なもの、真に受けていいわけ?って思った。
「俺だって何も覚えていないのに。そして昨日、そのことをお前に言ったらお前はまた同じことを言ったんだ」
あの校舎裏での出来事。
やっと仙崎の言葉の意味を知る。
「それが、やだったんだよ」と言った彼の言葉の意味。
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