飛べない豚は仙崎修哉

2/16
552人が本棚に入れています
本棚に追加
/336ページ
夢を見た。 目の前で男の子が泣いている。 顔は良く見えない。 だけど彼の手足が痛々しく縛られていることは、はっきりわかった。 「……っく、ひっ……」 夢の中だからか、周りの全てはぼんやりとしているのに、彼の啜り泣く声だけはやけにはっきりと聞こえる。 男の子は私の存在に気付くと、今にも消えそうな声で「助けて」と言った。 夢の中の私はうまく思考することができなかったが、なんだか物凄く居たたまれなくなって、彼にゆっくり近付いた。 そっと屈み、可哀相なくらい痩せた体をしっかりと抱き締める。 「大丈夫だよ。絶対、大丈夫。私が助けるから……!」 なんとか声を絞り出し、彼を励ます。 耳元で少年の首が縦に振られるのがわかった。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!