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夢を見た。
目の前で男の子が泣いている。
顔は良く見えない。
だけど彼の手足が痛々しく縛られていることは、はっきりわかった。
「……っく、ひっ……」
夢の中だからか、周りの全てはぼんやりとしているのに、彼の啜り泣く声だけはやけにはっきりと聞こえる。
男の子は私の存在に気付くと、今にも消えそうな声で「助けて」と言った。
夢の中の私はうまく思考することができなかったが、なんだか物凄く居たたまれなくなって、彼にゆっくり近付いた。
そっと屈み、可哀相なくらい痩せた体をしっかりと抱き締める。
「大丈夫だよ。絶対、大丈夫。私が助けるから……!」
なんとか声を絞り出し、彼を励ます。
耳元で少年の首が縦に振られるのがわかった。
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