飛べない豚は、仙崎修哉2

6/19
前へ
/336ページ
次へ
ガコッ 机と共に、目の前の男子生徒の体が飛んだ。 目の前には細長い足。 御堂には珍しいルーズソックスに包まれたそれは、紛れもない秋穂のものだった。 秋穂が、机を蹴り上げたのだ。 「女1人……つうか弁当1つに何人掛かりだっつーの」 そのままカツカツと扉の前の取り巻きに歩み寄る。 余りの出来事に呆然とする彼の間の前に立つと、秋穂は容赦なく 股間を、蹴り上げた。 「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 絶叫する男子を尻目に、秋穂が私のほうを向く。 「今だ!行きな!」 秋穂の漢っぷりに思わず傍観してしまった私は、その言葉ではっと我に返る。 廊下に向かって一目散に駆け出した。 「深雪っ、これ!」 秋穂の声に振り返ると、彼女は何か小さく光るものを投げた。 受け取るとそれは、小さな鍵だった。 それを見た瞬間、秋穂が何を言おうとしているのかがわかる。 「ありがとよ、相棒!」 私は真っ直ぐに廊下を走りぬけた。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

552人が本棚に入れています
本棚に追加