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「…ん」
目覚めると、柔らかいシーツの上に沈んでいた。
嗅覚が捕らえた匂いは、家のものではない。
「ここは?」
上体を起こすと、俺は制服を着ていることに気付いた。
そして段々と記憶が蘇ってくる。
「そっか…俺」
「気がついた?」
俺が寝ていたベッドを囲んでいたカーテンがそっと開くと同時に、入学式で聞いたのと同じ音程の声が聞こえた。
「脳貧血で意識を失うなんて相当苦しかったのね。今は意識の方はどう?ハッキリしてる?」
声の主を見上げると、若い女の人だった。
周りをカーテンで囲まれていて暗いため、顔はよく見えないが白い白衣を着ているのは分かる。
制服でないのを見ると、先生なのだろう。
更に部屋いっぱいに広がった独特の匂いから、ここが保健室だと察しがつく。
保健室だということは、この先生らしき人は保健医?
「あ…はい。意識は大丈夫です」
目覚めたばかりで、しっかり働かない視力をきっちり修正する。
ただでさえ暗がりで見えなかった顔が、少しはっきりと見えはじめた。
「そう。良かった。寝不足もあったみたいね…昨日ちゃんと寝た?」
先生は俺がしっかり目覚めていることを確認すると、カーテンを全て開け放った。
程良い量の光が射し込み、視界は完全に回復した。
「どうしたの?眩しかった?」
先生の姿をはっきりととらえたとき、頭の内側で何か小爆発が起こった。
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