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「健斗…そんな目を輝かせるようなことじゃないわよ」
「だって演技に関わることだし!」
小野はまるで餌を待つ子犬のよう(にはとても見えないが)に、期待の視線を大崎へと向けている。
そんな光景も、勿論日常茶飯事。
「まず補足しとくと、脳貧血って普通に起こるぶんには女の人の方がなりやすいらしいのよ」
「あ、それ調べたなぁ」
「だから良也くんはきっとかなりの低血で、台本にもあるけど前の日全然眠れなかったんでしょうねー。ということは」
「てことは?」
またコーヒーを啜って、大崎は続けた。
「この場面は儚い系の演技ね」
「儚い系…」
「尚且つ校長センセの長い話にキレ気味」
「儚くキレ気味…」
大崎の言葉に、小野は少しばかり考え込むと、何を閃いたのか、ポンッと手を打ってから答えた。
「ゆき○ら?」
「ちょ、…まぁゆき○らかなぁ」
何やら大人の事情で口に出してはいけない言葉を呟きながら、二人は妙に納得していた。
(あの人のゆき○らは正にそんな感じだったからなぁ)
と思ったのは小野か大崎か。
それとも両方か。
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