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…分からへん…。
この日、俺は自室に一人でいた。
椅子に座り、いつものようにネタ帳を開いた。
シャーペンを持つが、ネタが浮かばへん。
…どないしよう…。
ネタが浮かばん原因は分かっとる。
今日、小春と喧嘩したんや。
ホンマに些細な事やった…。
アイツがいきなり『他の奴とダブルス組みたい』とか言うからや。
ホンマに信じられへんかった。
俺らはずっと一緒に居るもんやと思っとった。
一緒に居るもんが普通やと思っとった。
せやから、そんな事言われてホンマにありえへんかった。
……小春の馬鹿………
アカン…ネタすら浮かばんのか……。
俺はネタ帳を閉じてシャーペンを机に置いた。
部屋を見回した。
当然、俺一人。
携帯を見た。
……新着メール無し。
何でや……。
何で何も言ってこんの？
ありえへん……。
俺は気をまぎらわす為にパソコンの電源を入れた。
ネット上の掲示板をフラりと見た。
あぁ…またや。
この掲示板に来ると、いつものように俺の事が書かれる。
当然、良い意味やない……悪い意味や。
バンダナを外し髪をかきあげた。
………直接言えばいいやん。
阿呆らしい…
書かれてる内容は決まって『アイツらはホモ』っていうもんや。
現実には『アイツら』やないんや…。
だって、小春にはその気がないんやもん。
せやから、その気があるんは俺だけや。
誰も理解してくれへん。
小春は試合が終わると偉く冷たい態度になる。
それが堪らなく嫌や。
試合中の俺への態度は演技であって、本気やないんやもん。
どうして分かってくれへんのやろう…？
パソコンをいじっている内にブログのページに辿り着いた。
……あ。
小春や……。
文章の書き方が正しく小春のもんやった。
内容を見て驚いた。
今日の喧嘩の事が書かれとる。
本人、何が原因なんかわからへんみたいやった。
信じられへん…。
パソコンの電源を切り、机に伏せた。
…何がＩＱ２００や。
何や阿呆らしくなってきた。
全然駄目やないか。
…小春は俺の事、分かっとるはずやのに…。
ただの独りよがりやん。
みっともない…。
どないすれば小春はこの気持ちに気付いてくれんやろ？
…もしかしたら、気付かないかもしれないけど……
顔を上げて再びネタ帳を開いてみた。
……あれ？
瞳から暖かい雫が流れた。
……わ…どないしたんやろ…俺……
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